高橋義矢
私は1978年、クリスチャンの両親の長男として生まれました。
生まれたときから教会に通っていました。そして、この天と地
は神様が創造されたもので、私たち人間も造られたこと、
二千年前にイエス様が地上に来られ、私たちの罪を赦すた
めに死んでくださったことなどを、疑うことなく信じていました。
住まいが父方の実家のお寺の敷地内にありましたので、
お寺の庭から毎週日曜日に教会に集っていました。
私か中学1年生の時に両親がキリスト集会に集うようになりま
した。その頃から私は友人とのつきあいなどで礼拝に行かな
くなり、徐々にイエス様から離れていきました。でも、両親が
毎回喜んで集会に集い、喜んで帰ってくる姿を見て、何か今
までと違う感じを抱きました。
すべてが順調だった私でしたが、高校を卒業してから大きな
ことが起こりました。
将来の夢である看護師になるための学習に挫折したことで
す。ギリギリの成績で入学した私は、勉強や実習について行
けなくなったのです。生きていることが辛くなりました。仲間に
悩みを相談しても解決は得られず、この現状から逃げたいと
思い、学校も休みがちになりました。そして２学期の途中で止
めることになり、夢も消え失せて真っ暗闇でした。このような
状態の時、唯一楽しみな場所、心が安まリ慰められる温かい
場所が、キリスト集会でした。日曜日に集会に行き、賛美を
聞くと、からからに渇いた心の中に神様の愛が溢れるように
入ってきました。本当に慰められるひと時でした。
「あなたの重荷を主にゆだねよ。主は、あなたのことを
心配してくださる。」 (詩篇55・22)
イエス様から離れては生きていけないと思いました。
しかし自分勝手な思いが人一倍強い私は、この世の流れに
敏感で、信仰を持ちながら、この世と調子を合わせて生きる
ようになりました。
学校を止めて１年、やはり医療職に就きたいという思いは
変わらず、救急救命士を目指そうと思い、専門学校に入学し
ました。今度こそ挫折しないように努めよう、と思いました。
入学して２ヵ月後に妻の早苗が妊娠しているのが分かりまし
た。１９歳でした。
私はこの世の基準からしか物事を見れなくなっていました。
当時は自分の犯した罪に、心の目が開かれていませんでし
た。私たちは結婚してから、私は学生、早苗は仕事をしてい
ました。自覚も責任もない、みじめな夫であり父親でした。
そんな私も、イエス様の憐れみと多くの支えによって、１年後
には救急救命士の資格を取得することができました。就職で
も一度は挫折しましたが、今の消防署に就職することができ
ました。６ヵ月の厳しい寮生活を終え、消防士としての仕事が
スタートしました。救急救命士の資格を持っている私か期待
した配属は救急隊でしたが、イエス様が用意されていたのは
消防隊でした。６ヵ月の消防学校では火災消火の訓練だけ
でしたが、一番恐れていた現場に行くことになりました。
目の前で炎があがり、火事現場では怒鳴り声の中で活動し、
自分には耐え難いものでした。
「あなたがたの会った試練はみな人の知らないようなもの
ではありません。
神は真実な方ですから、あなたがたを耐えることのでき
ないような試練に会わせるようなことはなさいません。む
しろ、耐えることのできるように、試練とともに、脱出の道
も備えてくださいます。」 (1コリント 10・13)
イエス様、もう耐えられません、早く脱出の道をくださいと心の
中で叫んでいました。
そんな時、主は一つの大きなことを私にお見せになりました。
それは集会に集っている友人の交通事故でした。彼も私に
似て、この世での楽しみや生活を大事にするタイプでした。
その彼が、事故で意識不明の重症が数日続き、意識が戻っ
ても脳にダメージがあり記憶さえも失っていました。私のこと
も忘れていました。でも、一つだけ彼は大きなものを得ていま
した。それは、イエス様が大好きになり、この世ではなく主を
まっすぐに見上げる者へと変えられていたことです。そんな彼
の、イエス様だけを見て喜んでいる姿を見て、私自身の信仰
について考えさせられました。
いつまで経っても信仰の確信がなく、宙に浮かんでいるような
根っこのない信仰から脱皮したい、と強く思うようになりまし
た。仕事の休みの平日に春日部の家庭集会に行った時、お
話をされる方を通してイエス様が私に語ってくださいました。
人生には二つの生き方がある。一つはこの世をすべてとして
生きる生き方、もう一つはこの世は過ぎ去るもので、さらに上
の天国でイエス様と共になることを目標として生きる生き方で
ある、というお話でした。私はこの世を愛して生き、イエス様
にも祝福はもらいたい、という両天秤をかけていました。
「世をも、世にあるものをも、愛してはなりません。もしだ
れでも世を愛しているなら、その人のうちに御父を愛する
愛はありません。」 (1ヨハネ２・15)
それまで私は、この世とイエス様をうまく調和して生きていくこ
とを考えていましたが、それはできない、ということが、はっき
り分かりました。
「あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということ
はできません。」 (マタイ6・24)
「私はキリストとともに十字架につけられました。もはや
私か生きているのではなく、キリストが私のうちに生きて
おられるのです。いま私か、この世に生きているのは、
私を愛し私のためにご自身をお捨てになった神の御子を
信じる信仰によっているのです。」 (ガラテヤ2・20)
次の日、バイクで仕事に行く途中、イエス様を生まれたときか
ら知りながら、この2４年間自分勝手に生き、都合のいい時に
だけイエス様にすがっていた私をも愛してくださり、十字架に
かかり死んでくださった事実に胸を打たれて、涙が止まりま
せんでした。その後も辛い状況は変わりませんが、イエス様
はいつも私を背負ってくださっています。心配してくださいす。
火災の現場でも、イエス様は私に必要な勇気を与えてくだ
さいました。
「恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。
わたしがあなたの神だから。わたしはあなたを強め、
あなたを助け、わたしの義の右の手で、あなたを守る。」
（イザヤ41・10）
その後、２年間の消防業務を終えて、念願の救急隊に配属に
なりました。すべての悩みは終わったかに思いましたが、
なんと今まで以上の苦しい日々が始まりました。人を助ける
ことの難しさ、思い描いていた理想の活動と実際の現場との違い。
自分はもっとできると思い、自分の持っている優しさや応急
処置の知識で、多くの人を助け救うことができる、まだ歴史の
浅い救急現場のこれからを引っ張っていこう、と傲慢になって
いました。でも、自分は本当に何もできない者と気づかされ、
砕かれました。看護学校の時と同じように気分は落ち込み、
仕事に行くことが辛くなり、また続けることができないのかと
思い、この状況から逃げ出したい思いでいっぱいになりま
した。春日部市での日曜礼拝と家庭集会だけでは足りなくなり、
みことばを求めて関東圏の家庭集会に参加させていただきました。
多くの方が話を聞き、祈ってくださいました。そして、いつも隣
で祈り、共に聖書を読んでくれる早苗がいました。ボロボロに
なっている私のために祈り、ずっとそばに居てくれました。
今まで夫婦の関係について深く考えたことはありませんでしたが、
早苗を通して夫婦が一つになる必要を気づかされました。
また、祈りの中で進められる集会の結婚式を、西軽井沢国際
福音センターで見て、結婚についても示されることがありまし
た。結婚生活を軽んじ、自分の欲のままに歩んできた罪を、
結婚６年目にして｢イエス様、ごめんなさい｣と夫婦で共に悔い
改めることができました。そして家庭集会でミンヘンさんと話し
ていた時、ドイツよろこびの集いに参加を勧められ、家族で
ドイツへ行くことになりました。
ドイツよろこびの集いは私の人生を大きく変える１週間とな
りました。大自然の中での賛美と聖書のお話、観光、何よりも
大きかったのは、イエス様だけを見上げ全てを捧げている
ドイツの方々(シュベスターさんたち)との出会いでした。
それは何も持っていないようですべてを持っている、イエス様
と共にいるということだけで内側から喜びが溢れ出て
いる、その姿を目にして、これこそ本物だと思いました。
本当にすばらしい1週間でした。その集いに２年連続、家族で
集うことができました。
２年間自分自身はボロボロでしたが、イエス様を賛美したい
という思いはとんとん強くなってきました。集会の多くの方の
祈りに支えられ、仕事の試練からも解放されていきました。
過酷な現場も多く、辛く苦しいときもありますが、いつもイエス様
の揺らぐことのない土台の上に立ち、イエス様を待ち望みたいです。
「キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の
栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走っているのです。」
(ピリピ 3・14 )